今、女流作家が熱い! 本の虫が推す絶対に読んでほしい作品10選

芥川賞や直木賞などの大手文学賞に女性の作家が多く選出されるようになり、本屋をはじめ街中でも見かける名前が増えてきましたね。

いえ、増えてきているんです。かつてよりも、圧倒的に。

ずばり今、女流作家がキています。

もちろん、かねてより活躍していた作家さんも含め、女性の描く物語が熱い!

というわけで今回は、本を読みすぎるあまり褒められるどころか心配された過去を持つ本の虫の筆者が、皆さんに読んでほしい作品10本をご紹介します。

おすすめ小説10選

それではさっそく、厳選に厳選を重ねた作品を紹介していきたいと思います。

筆者イチオシの10作品をどうぞ。

 

①江國香織「落下する夕方」(角川文庫)

・江國香織の略歴

1964年東京生まれ。

「きらきらひかる」「落下する夕方」などで人気を博し、2004年「号泣する準備はできていた」で第130回直木賞を受賞。

小説のほか、童話や絵本の執筆、翻訳も手掛ける。

・あらすじ

8年間も付き合ってきた恋人健吾がある日、「好きな人ができた。」と家を出ていく。

それと入れ替わるように、失意に暮れる梨果のもとへやってきたのは健吾の想い人、華子だった。

怒ることも悲しむこともままならずにうろたえる梨果を尻目に、華子は彼女の家へ居着いてしまう。

こうして二人の奇妙な共同生活は始まり、華子の無邪気さに振り回されながらも、梨果は彼女の不思議な魅力に惹かれてゆくのだった。

自分を振った男の惚れた女と同棲なんて、考えられるでしょうか。

あまりにも異常すぎる状況が、さもさも当たり前のように主人公の日常へ組み込まれてゆく衝撃。

そういった、どこか魔法めいた力を持つ華子という人間に、読み手もぐいぐいと引っ張られてしまいます。

読み進めるうち、彼女のエキセントリックな行動に何ら疑問を抱かなくなっている自分は、物語のなかの梨果そのもの。

わたしたちは梨果とともに華子に翻弄されながら、15週間をかけた失恋という喪失の物語を、ゆっくりと歩んでゆくのです。

②三浦しをん「風が強く吹いている」(新潮文庫)

・三浦しをんの略歴

1976年東京生まれ。

入社試験の作文に執筆の才を見出され、2000年「格闘する者に〇」で作家デビュー。

2006年に「まほろ駅前多田便利軒」で第135回直木賞を受賞。

小説のほか、オタク趣味を炸裂されたエッセイ集も人気。

・あらすじ

高校時代に陸上競技を挫折した走(かける)は、大学に入学してからも走ることを諦められないでいた。

ある日、持ち前の脚の速さを悪用して万引きを働いていたところを、同大学の先輩である清瀬灰二につかまり、どういうわけか成り行きで灰二の住むおんぼろアパート竹青荘(通称:アオタケ)に暮らすことになる。

というのも灰二は、このアオタケの住人を集めて箱根駅伝を目指そうとしていたのだ。

しかしアオタケの住人たちは、運動音痴の漫画オタクや25歳のヘビースモーカーなど、とても駅伝を走れるとは思えぬ面々ばかり。

灰二の無謀な挑戦にあきれ返る走だったが、住人たちとぶつかり、彼らの成長を目の当たりにしていくにつれ共に箱根を目指し始める。

とても文字だけとは思えない疾走感と爽快感。

ユーモラスな10人の駅伝メンバーはまるで実在するかのように本の中で息をしていて、その暮らしぶりが目に浮かびます。

そして何より、そんな彼らが世紀の大勝負をかける駅伝予選会のシーンは圧巻です。

2009年に映画化もされているので、そちらも是非合わせてどうぞ。

③小川洋子「薬指の標本」(新潮文庫)

・小川洋子の略歴

1962年岡山生まれ。

1990年「妊娠カレンダー」で第104回芥川賞受賞。

記憶が80分しか持たない数学博士と家政婦親子の交流を描いた作品「博士の愛した数式」が2004年に読売文学賞、本屋大賞を受賞しベストセラーとなった。

2007年7月より、芥川賞の選考委員も務める。

・あらすじ

サイダーの工場で事故により薬指を失ったわたしは、町で見つけた「標本室」に惹かれ、やがてそこで働くようになる。

標本室には数々の人が様々な思いで標本にと頼んだ品々が保管されていた。

人々の持ち寄る物たちを標本にするのは、標本技師・弟子丸という不思議な男だった。

わたしは次第に弟子丸に惹かれていくが、ある日彼はわたしに靴をプレゼントする。

その靴は奇妙なまでにぴったりで、わたしの足のためだけにあるようだった。

標本室で働き、弟子丸と交流を重ねるうち、わたしは自分自身のなにかも標本にしてもらおうと決める。

恋をする主人公の悦びと喪失の痛々しさが、緩やかに穏やかに、そしてどこか冷たく繰り広げられてゆきます。

標本室の存在、突然渡された足にぴったりと吸い付く靴、そして人々が標本を作る理由、様々なメタファーが繊細なタッチで描かれ、その不思議な空気に引き付けられました。

コップに張られた水のような静謐さと透明感なのに、圧倒的な質量をもって展開される物語。

本を読みながら、まるで夢を見ているような感覚になりました。

④瀬尾まいこ「卵の緒」(新潮文庫)

・瀬尾まいこの略歴

1974年大阪生まれ。

2001年「卵の緒」が第7回坊ちゃん文学賞で大賞を受賞しデビュー。

「天国はまだ遠く」「幸福な食卓」など映像化作品も。

自身の中学校勤務をもとにしたエッセイも執筆している。

・あらすじ

小学五年生の育生は、自分は捨て子であると信じてやまない。

彼には確かな確信があった。

自分には父親がいないし、何より母が、母から生まれたという証拠である「へその緒」を見せてくれないのだ。

それどころか、「あなたは卵で産んだのよ」と饅頭の箱に入った卵の殻を見せてくる始末。

のらりくらりとはぐらかす母親にやきもきする育生だが、母は確かに誰よりも彼を深い愛で包み、また育生も彼女の愛情を確かに感じているのだった。

「血は水よりも濃い」という言葉が昔からありますが、果たしてそうでしょうか。

家族を繋ぐのは血でも、ましてや役所に出す書類でもないのだということを、この本は教えてくれます。

血の繋がりがなくとも「ほんとうの家族」として愛し合う彼らの確かな信頼に、心が温かくなりました。

瀬尾まいこの文章はいつだって、不器用にやさしく、読者を包み込んでくれるのです。

⑤村田沙耶香「授乳」(講談社文庫)

・村田沙耶香の略歴

1979年千葉生まれ。

2003年「授乳」で第46回群像新人文学賞、優秀賞を受賞。

文学仲間につけられた「クレイジー沙耶香」の異名どおり独特の世界観を有した作品を数多く発表。

2016年「コンビニ人間」で第155回芥川賞を受賞した。

・あらすじ

受験を控えた私の家には、週に二回、家庭教師の「先生」がやってくる。

私は、まるで思春期の少女のように父を嫌悪する母親にも、なんだか気持ちの悪い父親にも、そう感じる自分自身にも苛立っていた。

息苦しい家の中で、「先生」がやってくる週二日、部屋の中で行う二人の“ゲーム”がわたしのひそやかな楽しみだった。

クレイジー沙耶香炸裂。

「ついてこられる人だけ、ついてきたらいいわ。」とでも言うようなストーリーと、圧倒的な描写。

身体への違和感や性への目覚め、親に対する生理的な嫌悪感など、10代の少女特有の軋みが、ぬるぬるとした生暖かい表現でつづられていてあまりのリアルさに鳥肌が立ちます。

表題作を含め、収録された他2編にも共通したこの本のテーマは、「女性性への抵抗と拒絶」。

まるみやあたたかさ、柔らかさなどが注目されがちな一般論とは真逆の、グロテスクな女性の性が描かれた衝撃の一冊でした。

⑥西加奈子「こうふく みどりの」(小学館文庫)

・西加奈子の略歴

1977年イラン生まれ。

出版社に原稿を持ち込み2004年「あおい」でデビュー。

2015年「サラバ!」で第152回直木賞を受賞した。

多くの作品を発表するとともに、絵本執筆やロックバンド、チャットモンチーへ作詞提供もしている。

・あらすじ

辰巳緑は、転校生のコジマケンが気になる14歳。

おじいちゃんが失踪中のおばあちゃん、妻子ある男性を愛し自分を生んだお母さん、バツイチ予定の子持ちの藍ちゃん、そして藍ちゃんの愛娘、桃ちゃんと、女ばかりの辰巳家で暮らしている。

女たちは様々な過去を抱えながら日々を過ごし、そして緑は初めての恋を知ろうとしていた。

関西弁でテンポよく語られる物語に、辰巳家の人々のキャッチーなキャラクターが相まって引き込まれました。

彼女たちそれぞれの境遇は過酷であるものの、苦悩しながらも困難を吹き飛ばす女性たちの姿が清々しいです。

女の子というのは、ものすごく思考をする生き物だと私は思います。

様々なことを胸に秘めながら、くるくるとおしゃべりな口は回り続けるのに、頭の中のことは簡単に舌の上に乗せてやらない。

けれど、本当に言いたいことも、なかなか言うことができない。

主人公緑のそんな姿は、いじらしくもかわいらしい、まさに「少女」でした。

⑦窪美澄「さよなら、ニルヴァーナ」(文春文庫)

・窪美澄の略歴

1965年東京生まれ。

2009年「ミクマリ」で第8回R-18文学賞大賞を受賞し小説家デビュー。

同作の収録された「ふがいない僕は空を見た」で第24回山本周五郎賞を受賞し、この作品はタナダユキ監督により映画化された。

・あらすじ

14歳で女児を殺害した元少年Aは社会に復帰し、ひそやかに暮らしていた。

どこかで生活をしている元少年Aを想い崇拝する少女・莢と、そんな彼女を死んだ娘と重ねる被害者の母親。

そしてそれを見つめる、小説を書くことにとらわれた作家志望の女。

運命の糸で引き寄せられた人々の思いが交錯する。

神戸連続児童殺傷事件を題材にした問題作で、刊行当時は元少年A本人の著書「絶歌」の発売と重なったこともありちょっとした波紋を呼びました。

様々な本を読んでいると時折、魂の絶叫のような作品に出会うことがあります。

この本はまさにそういった類のもので、触れれば傷ついてしまうのではないかという熱量を含んでいました。

完全なフィクションとして読むか、現実を交えて読むかで読後の感覚はガラッと変わるでしょう。

⑧綾瀬まる「神様のケーキを頬ばるまで」(光文社)

・綾瀬まるの略歴

1986年千葉生まれ。

2010年「花に眩む」で第9回R-18文学賞読者賞を受賞。

「やがて海へと届く」が2016年第38回野間文芸新人賞候補、また2017年には「くちなし」が第158回直木賞候補に選出された。

・あらすじ

とある雑居ビルには、様々な人が働いていた。

シングルマザーのマッサージ師は自分に自信がない。

カフェバーの雇われ店長は恋をしている。

しがないOLはいくら拒絶されても理想の男を諦められないでいた。

それぞれがそれぞれの苦しみや悲しみ、悩みを抱えながら、それでも明日への一歩を踏み出そうと前を向く短編集。

“誰にも嫌われないのはいい作品じゃなくて、どうでもいい作品ってことです。強く主張するものが無くて、意識に残らないから嫌われない”
――「光る背中」より

うまくやれない人たちが、それでもなんとか、どうにかしようとゆっくり動き出してゆく、行き詰ってしまった背中を押してくれる作品集。

綾瀬さんのまるみのある柔らかな言葉の数々が、読んでいて優しい気持ちにさせてくれます。

⑨湯本香樹実「夏の庭」(新潮文庫)

・湯本香樹実の略歴

1959年東京生まれ。

処女小説「夏の庭 The Friends」が日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞し、映画化、舞台化、ラジオドラマ化される。

小説のほか、脚本家としても活躍。

・あらすじ

「人が死ぬ瞬間を見てみたい。」

ぼくと山下、河辺の三人は、町のはずれに一人で暮らすおじいさんを観察することにした。

おじいさんは観察されていることを知って憤慨しながらも、ぼくたちがやってくるのをどこか楽しみにしているようだった。

死ぬところを見てみたかったはずなのに、生ける屍のようだったおじいさんはみるみる生気を取り戻していく。

そんなおじいさんにぼくたちは、様々なことを学ぶのだった。

「人の死ぬのが見てみたい」なんて、始まりはとんでもなく不謹慎な動機でしたが、そんな少年たちと関わることで死んでいるように生きていたおじいさんが生気を取り戻していく様子や、交流を通して「少年」だった彼らが心の成長を経ていく描写は瑞々しく、なんとも言えない愛おしさがこみ上げます。

⑩中脇初枝「きみはいい子」(ポプラ社)

・中脇初枝の略歴

1974年徳島生まれ。

1991年「魚のように」で第2回坊っちゃん文学賞を受賞し、17歳で小説家としてデビュー。

児童虐待をテーマにした「きみはいい子」が2012年に刊行され、ヒット作となる。同作は2013年に第28回坪田譲治賞を受賞し、2015年には映画化された。

創作活動の傍ら、民話、昔話の研究をしており、子供向けの絵本や昔話の再話も執筆している。

・あらすじ

教師2年目の岡野は真面目だが優柔不断な青年で、生徒の親と教師たちの板挟みで担任になった一年生のクラスを学級崩壊させてしまう。それでも何とか一年をやり過ごし、次の年に担任になった四年生のクラスに、虐待を受ける生徒がいることを知る。

夫が単身赴任中の専業主婦「あたし」は何かと理由をつけて一人娘のあやねに暴力をふるっている。
同じマンションに住んでいるハナちゃんママに、ある日自宅へ招待されるが、そこであやねは誤って紅茶のカップを割ってしまう。

小学校の通学路に一人で暮らしているあきこは、最近記憶があいまいになってきた。
それでもいつも「こんにちは、さようなら」と挨拶をしてくれる子のおかげで、自分の存在を実感できていた。
そんな少年がある日、家の鍵をなくしたと言って助けを求めてきた。
あきこは少年を家に招き入れ、母親の迎えを一緒に待つことにする。

五本のストーリーからなる、それぞれの親子の物語。

親と子、そして大人と子どもの在り方とは何かを深く考えさせられました。

「児童虐待」という重いテーマなだけに、思わず本を閉じてしまいたくなるような苦しい描写も多くありますが、これはまさに、目をそらし続けていた暗い現実に向き合うべきなのだと警鐘を鳴らしてくれているのです。

問題視され続けている児童虐待、そして我が子を愛せず、暴力に走ってしまう親がいるという現実に、何を思いますか。

2015年に公開された映画もあわせて鑑賞してみてください。

おわりに

熱量多めで紹介させていただきました10作品、いかがでしたでしょうか。

正直まだまだ語り足りない、紹介したい本はもっとあるのだ、という気持ちですが、ぎゅっと厳選しましたので、ぜひ手に取っていただけたら幸いです。

今回語りつくせなかった部分、また筆者とは違った角度から見えた物語の世界を、本を読んだ皆様が楽しんでくれたらと思います。

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